便秘の定義とは?
便秘の定義とは
何日お通じがなかったら便秘なの?と思ったことありませんか。
「慢性便秘症診療ガイドライン」というお医者さんが患者さんが便秘かどうかを判断する基準が設けられていて、それは“本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態”だとされています。つまり、〇日お通じがなかったら便秘、という決まりはなく、あなたがお通じがなくてすっきりしない状態が続いているのであれば便秘、という定義なのです。
ただ、4-5日お通じがなくてお腹がはったり不快感があるのであれば一般には便秘と考えられます。
便秘はなぜ起こるのか
便秘にはいくつかのタイプがあります。
1. 弛緩性便秘
加齢や運動不足などで腹筋が弱くなったり、刺激性の便秘薬などを乱用したことによって、大腸のぜん動運動が低下して便を押し出せなくなり、大腸内に便がたまります。その結果、便から水分がなくなってやがてカチカチに硬くなり出にくくなります。便秘の中で最も多い種類です。
2. 痙攣性便秘
ストレスで交感神経が優位になると腸は動きが鈍くなり、リラックスして副交感神経が優位になると腸の動きがよくなります。精神的ストレスや過敏性腸症候群などで、その自律神経のバランスが乱れると腸管が緊張・痙攣し、便がうまく運ばれなくなると、便がうさぎのフンのように小さなコロコロのものになります。
3. 直腸性便秘
排便を我慢することが多いと便が直腸を通過しても「ウンチだ!」と体が認識せず直腸に溜まりがちになります。
便秘を引き起こす原因のほとんどが生活習慣にあると言われています。具体的にみてみましょう。
ダイエット
無理な食事制限ダイエットをするとウンチをつくる「材料」が不足します。材料がなければ、ウンチを作ることはできません。また、大腸を動かす助けをする、胆のうから出る「胆汁酸」は、食事をした刺激で体から分泌されるので、食事が少ないと、減ってしまいます。ダイエットをするとその両方が不足し、排便回数が減少してしまいます。
食物繊維の不足
食物繊維の内、不溶性食物繊維は大腸内の粘膜壁を刺激したり、水分を保持したりすることで、排便を促し便通を整えてくれます。また、水溶性食物繊維は、腸内細菌のエサになることで腸内細菌が出す体に有用な短鎖脂肪酸の増産を助けてくれます。
ただし、腸内細菌バランスが乱れておなかが張りがちな人が一度に多くの食物繊維を摂ってしまうと、かえってお腹がはったり下痢をしたりといったこともあります。
水分不足
便の80%は水分でできています。一般的に、毎日約9Lの消化液や水分が小腸からながれてきますが、その大半が大腸で吸収され、便に残る水分はわずか200ml(コップ1杯)ほどしかありません。口から飲む水の量が少なければ、コップ1杯を確保できずに、硬くなり、排便困難になってしまいます。
運動不足
直腸に溜まった便を押し出すには、腹筋を収縮して腹圧をかけます。デスクワークなどで座っている時間が長く、あまり運動をしない方はこの筋力が低下します。腹筋が弱いと、直腸のウンチを十分に肛門へ送り込むことができなくなり、排便困難になってしまいます。
ストレス
消化器官が活発に動くためには副交感神経が優位に働いて、リラックスした状態が必要です。ストレスがかかり交感神経が優位な状態になると、大腸が緊張して直腸へ便を送ることができなくなってしまいます。
トイレの我慢
時間がないからと、トイレに行くのを我慢し続けると、体がウンチだ!という信号を認識しなくなってしまいます。
快適な腸ライフに不可欠な腸粘液の話
大腸では、小腸から大腸まで大量の消化液(水分量約9L)が吸収されながら、残った水分で便が作られます。大腸のヒダとヒダのあいだをいったりきたりして便をこねて固め、横行結腸ではゲル状、下行結腸へ運ばれる頃には半固形状となり最終的に固形便ができあがります。つるんと健康な便が出来上がるには腸の中で分泌される「粘液」が重要な役目をはたしています。
腸の粘液は、消化管の粘膜から分泌される透明で粘性のあるゼリー状のものです。ムチンと呼ばれている糖と蛋白質の分子化合物で、消化液とは異なり粘膜の表面を覆っています。この粘液が腸粘膜の表面を覆っているおかげで、悪玉菌や異物が体の中に入ることが出来なくなっています。硬い便もつるんと滑って移動しやすくしています。この粘液のおかげで、便は粘液に覆われて、つるんと排便ができる仕組みになっています。この粘液は自律神経の働きで分泌されますが、ストレスが過剰で自律神経が乱れて分泌が少なくなると、便秘になってしまいます。また粘液層が少ないと、細菌からの防御機能が落ちて、炎症を引き起こします。腸粘膜でおこった炎症は全身に飛び火して、自己免疫疾患やがんなど様々な病気のリスクを高める可能性もあります。そしてこの粘液は加齢とともに少なくなってしまうのです。
脂っこい食事などで腸内環境が乱れて悪玉菌が優位になると、悪玉菌がこのムチンを分解して腸粘液が薄くなり、腸内の異物や悪玉菌の侵入を許してしまい、炎症が起こってしまいます。
通常このムチンの層の表面にはホスファチジルコリンというリン脂質の一種があります。ホスファチジルコリンは、粘液の表面に疎水性の層を作って悪玉菌や異物等から粘液層を守っていますが、腸内環境が乱れるとホスファチジルコリンも十分に分泌されないことから、簡単に悪玉菌や病原菌、異物等が粘液層にアクセスできる状態を作ってしまいます。
粘膜環境を最適な状態に整えることが、便秘改善の第一歩だと考えられます。
潤いのある腸を目指して腸活しましょう!